◎輝く島原人 THE SCENE Vol.07 島原に生きる  広報しまばらでは、生き生きと活動し、楽しみながら社会に貢献する人生の達人たちを「輝く島原人」として紹介しています。  第7回目は島原の歴史をこよなく愛し、次世代に引き継ごうとさまざまな取組を行っているのは、郷土史家の松尾卓次(まつお たくじ)さんです。「人生の達人」松尾 卓次さん(82)は昭和10年、9人兄弟の3男として津町で生まれ、育つ。長崎大学卒業後、中学校社会科の教諭として38年間教壇に立つ。定年退職後は島原城資料館解説員や島原市文化財保護審議会の会長などを務めるとともに、郷土史家として島原の歴史を広く発信している。宮の町在住。   ▼郷土愛が生んだ「歴史的名城」  「約400年前の島原藩初代藩主の松倉重政の城づくりが現在のまちづくりにつながっています。島原市民はお城と共に生きてきたような気がします」と語る松尾さんは、中学校の社会科教諭を定年退職後、雲仙・普賢岳噴火災害が終息に向かっていた平成8年ころから、全国からの温かいお見舞いへの恩返しの気持ちで、災害の語り部として観光客などに災害の話をしていました。それ以来、「島原城」で22年余り島原城資料館解説員として、修学旅行生や観光客などに島原城を中心とした島原の歴史や魅力を発信し続けています。  「現在、観光のシンボルとして多くの人々に親しまれている島原城は、昭和39年に復元され、建設費の3分の1が市民や出身者などからの寄付です。 また、歴史資料館に展示されている貴重な史料は市民から寄贈されたものも少なくありません。このことから分かるように、市民のお城にかける熱い思いと郷土を思う心が込められた城であり、みんなで作り上げた誇りある歴史的名城だといえます」と笑顔で話してくれました。 ▼郷土史を語り継ぐ  島原の歴史の宝庫である「肥前島原松平文庫」。それは、旧島原藩主・松平家が収集した歴史などの古文書約1万点をはじめ、島原ゆかりの古文書から成り立っており、平成25年に県有形文化財に指定されています。30年程前に、この松平文庫が地元では詳しく研究されていなかったことを知った松尾さんは、先輩や仲間とともに読み始め、郷土の歴史を調べる中でこれまで知らなかった江戸時代の島原の歴史や全国の出来事などさまざまな発見があったそうです。  「島原藩の歴史は400年続いています。現在は島原藩日記や深溝世紀(歴代深溝・島原藩の業績や出来事をまとめた本)を中心に読んで、皆さんが分かりやすいように現代文に直しています」と話す松尾さん。  気軽に楽しく郷土史に触れてもらおうと、郷土史を学ぼう会(市民講座)をはじめ、各地域に出向いて、婦人会や老人会を対象とした講座を開き、それぞれの地域の歴史を語るなど島原の歴史を市民皆さんに紹介しています。 ▼貴重な資源を保存・継承  島原市文化財保護審議会の会長として、市内にある国や県などの指定文化財を定期的に巡視して文化財の保護に努めている松尾さんは、観光客から「島原には本物はあるが、その魅力を十分に生かし切れていない」との声を耳にするそうです。 「武家屋敷一帯は400年程前の建物や樹木などがそのままの状態で残っています。そのような貴重な資源を官民一体となって文化財として保存・継承していく必要があります。そのためにも、市民皆さんに島原の歴史を通じて良い所を広め、みんなでよかまち島原をもっとよくしていきたいです」と話してくれました。 ▼引き継ぎ役として  「島原城天守閣の展望所から市街地を眺めていると島原の昔の出来事や将来の声が聞こえてきます」と話す松尾さん。 「島原にはまだまだ知られていないところが数多くあります。これまで先輩諸氏が築いてきたものを大切にして、一人でも多くの人に郷土に対する愛着と歴史にもっと関心をもってもらうため、これからも次の世代への引き継ぎ役として、永遠に残る大切な歴史を伝えていきたいです」と力強く話してくれました。 (写真1)島原の歴史と未来に思いをはせる松尾さん(島原城天守閣展望所にて) (写真2)郷土史を学ぼう会(市民講座)で受講者に古文書を解説する松尾さん (写真3)肥前松平文庫の古文書を調べる松尾さん