(特集)島原の復興を支えた人々へ贈る ありがとう。 輝く島原人 THE SCENE Vol.41 島原に生きる【特別編】 「人生の達人」 雲仙復興事務所の皆さん ○島原と共に歩んだ軌跡  平成2年11月、198年ぶりに噴火活動を再開した雲仙・普賢岳の噴火活動が終息しない中、島原の復興と安全を守るため平成5年4月に開設された、雲仙復興事務所が今年度で閉所の予定です。島原復興までの28年間のあゆみと功績を振り返るとともに、そこで活躍してきた人々を紹介します。 国土交通省 九州地方整備局 雲仙復興事務所(イラスト:サー坊) 28年のあゆみ 命がけの復興工事  事務所開設当時、火砕流は依然として多発しており、復興が急がれる現場周辺での工事は危険と隣り合わせでした。現場にはコンクリート製の避難シェルターや監視所を整備するなど、安全対策を講じながら一日も早い島原の復興を目指し、命がけの作業が行われました。 (写真上・下)多くの重機を使い、復旧作業を急ぐ工事 (写真中)監視所のそばを流れる火砕流 無人化施工技術の開発  火山災害を前に難航する工事の状況を打開したのは、建設機械を遠隔操作する世界初の試みとなる「無人化施工技術」の開発でした。これにより砂防施設の整備は加速し、復興の大きな原動力となりました。今では「UNZEN(雲仙)方式」として全国の災害現場で活躍し、大きな成果を残しています。 (写真上)RCC工法によるえん堤工事 (写真中)鋼製スリット据付け工事 (写真下)操作室から建設機械を遠隔操作する作業員 地域との協働  被災地復興の先駆けとなった「安中三角地帯嵩上げ事業」や、ふるさとの遺構を守る「われん川整備事業」など、地域の皆さんが待ち望むふるさとの復興を支援。災害の伝承や地域防災力の向上、そして島原半島ユネスコ世界ジオパークとの連携など、地域発展にも尽力しました。 (写真上)島原防災塾で、平成3年9月の大火砕流で被害にあった旧大野木場小学校について説明する復興事務所職員 (写真中)安中三角地帯嵩上げ事業 (写真下)われん川整備事業 道路の整備  「島原深江道路」は南島原市との交通を確保、災害に強い道路を目指し平成11年に完成。そして「島原中央道路」は、諫早まで続く島原道路の一部区間として計画され、平成24年に完成。島原の観光や物流に大きな役割を果たし、復興とさらなる活性化に貢献しています。 (写真上)島原中央道路開通式の様子 (写真中)上空から見た建設中の島原中央道路 (写真下)島原深江道路開通式の様子 砂防設備の完成  事務所開設から28年の歳月をかけ水無川、中尾川、湯江川で砂防えん堤や導流堤など、数多くの砂防設備が完成しました。噴火災害当時のような大きな土石流や溶岩ドームの崩壊などの災害から、静かに人々とまちを守り続けます。 (写真上)中尾川上流砂防えん堤群 (写真中)水無川上流砂防えん堤群 (写真下)湯江川砂防えん堤 (二次元バーコード) qsr.mlit.go.jp/unzen/ ▲雲仙復興事務所に関する詳細は、ホームページで確認してください 【補足説明】「http://www.」は入力しなくても自動的に補完されるので省略しています ○安全安心を支える人々  安全安心が当たり前であるために、影ながら支えてくれる人々がいます。島原半島の最前線で働く人々の仕事の一部を紹介します。 最前線で指揮をとる  人が立ち入ることができない警戒区域や土石流などの災害が発生するかもしれない現場では、工事関係者の安全を第一に考えます。天候や溶岩ドームの状況を常に気を配りながら、スムーズに工事が行えるよう管理、監督しています。 (写真:現場監督をする職員) 島原の今を見守る  水無川や溶岩ドーム周辺には、カメラや振動計、レーダー測量機など数多くの観測機器が設置され、土石流の発生や溶岩ドームの動きを休むことなく監視、観測しています。  工事関係者の安全を守るとともに、県や市などの関係機関や地域の皆さんに情報提供しています。 (写真:モニターを見ながら監視作業をする職員) 地域の人々に伝える  災害は、いつ起こるか分からず、想定外の災害が発生することも珍しくありません。  雲仙・普賢岳噴火災害の教訓を後世へ伝えるため、防災意識の向上や、噴火災害の伝承などに協力、支援しています。 (写真:自らの災害経験を子どもたちに語り伝える職員)  平成5年4月に着手した雲仙・普賢岳の直轄砂防事業が、今年度で終了予定です。これまで雲仙復興事務所の事業にご協力いただいた多くの皆さまに深く感謝を申し上げます。 噴火災害からの復興という目標に向けて、地域の皆さまと一緒になって事業を進めてきたことが、当事務所の仕事の大きな特徴であり、そのような仕事に携われたことに、当事務所に勤務した歴代職員・現役職員の誰もが喜びを感じております。  雲仙復興事務所は閉所予定ですが、国土交通省としては引き続き安全安心な地域づくりに関わってまいりますので、これからもよろしくお願いいたします。 雲仙復興事務所 田村 毅(たむら たけし)所長(同写真) (集合写真:復興事務所の入口で島原半島の皆さんへ感謝を伝える職員一同) (組み写真・8枚) ①防災室で打ち合わせ ②火山防災ワークショップ ③現地調査 ④雲仙復興工事事務所開設(H5.4)⑤合同防災訓練 ⑥溶岩ドーム調査 ⑦・⑧平成新山調査登山 ○島原半島の未来を守る  砂防設備の完成により、雲仙復興事務所はその役目をいったん終了しますが、今まで築き上げてきた防災に関する設備の維持・管理、そして土石流や溶岩ドームの監視・観測には、高度な技術を必要とします。  島原半島をはじめとする多くの人々からの強い要望を受け、令和3年4月からは新たに、長崎河川国道事務所「雲仙砂防管理センター(仮称)」として、存続する方針が昨年12月に示されました。  これからも島原半島の人々やまちを災害から守り、安全安心を支えてくれる人々に心から感謝するとともに、これからの安全を祈念します。 ○沿革 平成5年4月 建設省雲仙復興工事事務所(当時)開設。直轄砂防事業着手 平成5年11月 島原深江道路建設着手 平成6年10月 世界初の無人化施工による除石工事着手 平成7年9月 水無川1号砂防えん堤工事に着手 平成9年11月 千本木1号砂防えん堤工事に着手 平成11年2月 島原深江道路全線開通 平成13年4月 島原中央道路事業化 平成13年10月 湯江川砂防えん堤工事に着手 平成14年9月 大野木場砂防みらい館開所 平成24年10月 島原中央道路供用開始 平成27年1月 溶岩ドーム崩壊対策(水無川砂防えん堤嵩上げ)着手 平成30年3月 溶岩ドーム崩壊対策(水無川砂防えん堤嵩上げ)完了 令和2年3月 中尾川・湯江川直轄砂防事業終了(長崎県へ移管) 令和2年6月 水無川の一部で直轄砂防管理に着手 令和3年3月 国土交通省雲仙復興事務所閉所(予定)、水無川直轄砂防事業終了(予定)