◎輝く島原人Vol.46 「女性が変える、未来を守る」  広報しまばらでは、生き生きと活動し、楽しみながら社会に貢献する人生の達人たちを「輝く島原人」として紹介しています。  第46回目は、有明町の海や川の浄化活動に積極的に取り組んでいる宇土 ミドリ(うと みどり)さんを紹介します。 「人生の達人」宇土 ミドリ(73) 昭和23年、雲仙市国見町で生まれ、育つ。昭和45年、結婚を機に有明町へ生活の場を移す。共働きで4人の子どもを育てながら、有明町漁協婦人部に加入。自然環境保護の観点から女性団体へ呼びかけ、有明町の海や川を守る活動を続けている。有明町漁協婦人部長(H26~)、有明町海と川を守る会会長(H26~)。有明町湯江在住。 (写真)湯江川上流の織橋(おりはし)からEM活性液を放流する宇土さんと、漁協女性部の皆さん ○自然保護に必要なもの  昭和45年、22歳のころ、結婚を機に有明町で生活を始めた宇土さん。自身の仕事と4人の子どもの子育てに奮闘していたころ、有明町漁協女性部(当時、婦人部)に参加しました。当時は「ガネ」と呼ばれるガザミが主要魚種で、毎年「有明ガネまつり」が行われるなど、きれいな海にたくさんの生物が生息していましたが、今では生物は減少し、泳ぐこともできないくらい海は汚れてしまいました。「自然環境の変化は、海を見れば分かります。なぜなら、その影響を一番受けているのが、漁業者たちだからです」と、婦人部長としての思いを話してくれました。  以前、地元の子どもたちに環境問題に関する実験を行いました。合成洗剤を入れた水槽に魚を入れると、洗剤の中に含まれる界面活性剤が魚のえらを固め、呼吸ができなくなり死んでいくというものです。「実験の様子を真剣に見入る子どもたちの目を忘れられません。知らないことほど怖いものはないのです。CMやインターネット上など一部の情報にとらわれず、真実を理解することが自然環境を守るためには必要なのです」と、胸の内を話してくれました。 ○ふるさとを守る決意  深刻化する海や川の汚染に対し、「何か行動しなければ」と思い立ち、有明の女性団体が互いに呼びかけあい、平成4年「有明町海と川を守る会」を発足しました。会員として活動中、前会長が体調を崩したため、「どげんか、なろもん」という意気込みで後任を引き受けました。  水質改善のため各団体が交代で、EM活性液(以下「EM」という)を湯江川上流から放流する活動をしています。時には心無い人から「廃油を流している」と疑われることもありました。EMとは有用な菌の集合体で、水質を改善する作用が確認されています。そのまま流すと水質汚濁の原因となる米のとぎ汁も、EMや糖蜜と混ぜて発酵させると、花や野菜の肥料などにもなり、海に流れ出た後はヘドロをろ過する作用があります。  漁業に携わる人々には、漁があっての生活です。一人一人の心掛け次第で、魚やその他の生物の未来が変わります。「生活排水は環境に大きな影響を及ぼします。『生命のふるさとの海』を守るため、EMの放流や自然に優しい洗剤の周知・普及を続けることで、昔のように魚がたくさん泳ぐ、きれいな海や川を一日も早く取り戻したいです」と、今後の目標を語ってくれました。 (写真)地域住民と海の環境のために、漁協倉庫裏でEM活性液を作る宇土さん