◎輝く島原人 Vol.47 「文字で世界を変える」~全ての出会いに感謝~  広報しまばらでは、生き生きと活動し、楽しみながら社会に貢献する人生の達人たちを「輝く島原人」として紹介しています。  第47回目は、手話や要約筆記を用いて、聴覚障害者の活動支援をしている市川 克子(いちかわ かつこ)さんを紹介します。 「人生の達人」市川 克子 さん(72) 昭和24年、諫早市で生まれ、育つ。地元の高校卒業後、県外に出た後、Uターンして諫早市内で幼稚園教諭として働く。幼稚園時代の経験と仲間との出会いから、手話と要約筆記を学び聴覚障害者支援に尽力。佐世保市社会福祉協議会福祉協力者表彰(H17)、島原要約筆記会すまいる会長(H18~)、佐世保市制施行106周年市政功労者表彰(善行功労、H20)、新町在住。 (写真)市長を囲む地域懇談会で、聴覚障害者のために要約筆記を行う市川さんと、「すまいる」の皆さん ○始まりは仲間との出会い  昭和62年、夫の転勤で長崎市で生活を始めた市川さん。ある日、新聞の手話講座の募集記事を目にしました。昔、幼稚園で働いていた時、耳が不自由なお母さんとコミュニケーションをとるため、簡単な手話を学んだ経験があります。当時を思い出し、誰かの役に立ちたい一心で再び手話を学ぶ決意をしました。  手話講座が修了するころ、県内初の要約筆記奉仕員養成講座(以下、養成講座)の開講を知り、要約筆記が聴覚障害者への情報支援手段の一つになると確信し、迷いなく受講を決めました。その後、講座を受講した仲間とサークルを立ち上げ県の養成事業に携わり、平成17~18年には本市で開催された県の養成講座に、当時佐世保市在住だったにも関わらず、講師の一人として参加しました。  平成20年、翌年の島原転居を前に市役所福祉課を訪れ、本市での養成講座の実施を相談しました。そして翌年、以前の仲間たちへ呼びかけ、「島原要約筆記会すまいる」を結成しました。以来、12年以上に渡り、志を同じくする仲間たちと共に、本市の要約筆記者派遣事業へ参加し、聴覚障害者の支援を続けています。 ○手の温もりで伝え続ける  派遣事業は南島原市、雲仙市を含む半島全域へ拡大。「すまいる」もそれに伴い成長していきました。  活動の中で最も大切にしていることは、聴こえに障害を持つ当事者との交流です。教科書では学べない、当事者からの学びを意識しながら、難聴者や中途失聴者、奉仕員や県登録の要約筆記者、要約筆記に理解ある健聴者が共に活動することで、会の力を高め合っています。  ある時、夫を亡くした高齢難聴者に「私は難聴になって幸せです。筆談できる仲間と出会えて幸せです」と、言われました。その言葉に、要約筆記を通して生きがいのある人生をいただき、活動を通して社会参加できていること、そして人として日ごろ忘れかけている大切なことに気づかされました。  「半島三市に張った要約筆記の太い根に枝葉をしっかりと伸ばしながら、音声情報のバリアフリー社会の実現を目指し、『微力ではあるが、無力ではない』と信じて、仲間と共に活動を続けます。筆談ボードを手に、気づいたらすぐ、聞かれたらすぐ、手の温もりで書いて伝えていきたいです」と、今後の目標を語ってくれました。 (写真)手書きやパソコンを利用した文字をプロジェクターで投影している様子 (写真)難聴者のラジオ出演を支援 (写真)仲間と一緒に記念写真