◎輝く島原人Vol.48 「No disk, No life.」~人生をくれた出逢い~  広報しまばらでは、生き生きと活動し、楽しみながら社会に貢献する人生の達人たちを「輝く島原人」として紹介しています。  第48回目は、障害者スポーツを通して仲間とのつながりや自身の人生を大切に生きている中村 安男(なかむら やすお)さんを紹介します。 「人生の達人」中村 安男さん(72) 昭和23年、有明町湯江で生まれ、育つ。16歳の時、大工を志し大阪へ上京。Uターン後、仕事中に不慮の事故に遭い左手に障害を持つ。周囲の誘いで始めたフライングディスクで、国体を中心に多数入賞。障害者スポーツの先頭を走る。東京国体アキュラシー金(H25)、島原市市民体育祭特別表彰(H26)、和歌山国体ディスタンス金(H27)、島原市長特別表彰(H28,H30,H31)。有明町湯江在住。 (写真)練習時、フライングディスクが飛んで行く行方を見つめる中村さん ○友がくれた希望の光  16歳の時、大工を志し大阪へ上京した中村さん。見習いから始め、一人前の大工職人を夢見て、毎日一生懸命仕事に励みました。  30歳を過ぎたころ、実家が兼業農家で長男だったこともあり、生まれ育った地元にUターンを決意、両親をそばで支えながら、大好きな大工の仕事を続けました。  ある時、仕事中に不慮の事故に遭い左指に大けがを負い、障害と共存する生活が始まりました。失意に暮れる中、現島原市身体障害者福祉協会会長の林田さんや、地元の友人たちの勧めでフライングディスクに出逢いました。以来、昼は仕事、夕方や週末は練習の日々を送り、障害を持ったことや天職と思っていた大工職に就けなくなった悲しみから立ち直ることができました。  フライングディスクは、風を読むのがとても難しいスポーツです。競技者には視覚障害の人もいて、「耳」で風の音を聞き分ける姿に、感心させられたことがあります。「仕事終わりに5000歩以上歩く時もあり、仕事と練習の両立は本当に大変ですが、他の選手に負けないように頑張ります」と、静かな口調の中に闘志を秘めながら語ってくれました。 ○気づかされた「優しさ」  本格的に練習を始めてから約4年。平成25年に開催された東京国体へ参加、5m先の円の中を通す「アキュラシー」で金メダル、最も遠くへ飛んだ距離を競う「ディスタンス」で銅メダルを取る活躍をしました。その後も5年間に4度国体に出場、安定した力で毎回メダルを獲得しました。 「個人もそうですが、団体で金メダルを取れたときは本当にうれしかったです。他県の選手と出会ったり、仲間になれることがフライングディスクを続ける上での一番の喜びです」と、熱い胸の内を教えてくれました。  けがをする前は、心に余裕が無くいつもピリピリしていました。障害を持つことでバリアフリーなどの生活環境の大切さや、周囲の人々の温かい心に気づくことができ、前より「優しく」なれた気がします。  「参加者の高齢化と、若者の参加が少ないところが少し残念です。一緒に練習したり、大会に出ることでスポーツを通じたつながりを持てたらうれしいです。今はコロナ禍で大会も中止になったり、思うような活動はできませんが、体力の続く限りフライングディスクを続けていきたいです」と、今後の目標を語ってくれました。 (写真上)福井国体(H30)に出場した仲間たち (写真下)左手の痛みに耐えながら仕事に励む中村さん