●ふるさと再発見 ○島原城址(せき)保存運動  明治に入り、島原城の土地は民間に払い下げられます。本丸だけを見ても複数の地権者がいて、宅地や畑地としてそれぞれ個々に利用されていました。   1913年(大正2)の終わりごろの新聞に、島原城址の保存についての記事が登場します。  島原城の史跡保存の動きが、今ある資料からうかがえる最も古い事例です。   その動きをリードしていたのは、当時の南高来郡長であった小野七五三蔵(おの しめぞう)でした。  小野は今の大分県にある旧島原藩領の出身で、先祖は宇都宮より移住し、祖父の代まで藩から禄を受けていた人物でした。郡長となって以来、目に留まっていた城址が廃墟に映っていたことを憂い、城址を買い上げて保存したいと考えるようになり、公費による城址の買い上げ交渉に着手します。  ところが、買い上げ後の利用についての案を記事から拾い上げると、公園(記事には「公共 の遊園地」とある)のほか、果 樹園や種苗園、あるいは藩祖を祀る神社を建て、南堀端に鳥居を作り橋を架けるという案までありました。往時の城の姿をとどめるという、今の史跡保存とは発想が大きく異なっています。そして、それは小野が目指していたものでもありませんでした。  結局、買い上げの金額に折り合いがつかなかったことで、この動きは立ち消えとなったようです。地域にとって必要なものが何なのかを、現代にもなお問いかけているような出来事です。 (松平文庫学芸員 吉田信也(よしだ しんや)) ●クローズアップ  ○「NPO法人 島原薬草会」  (写真)「NPO法人 島原薬草会」会員の集合写真  島原市に日本三大薬園跡があることを皆さんはご存知ですか。本市の小山町にある国指定史跡の「旧島原藩薬園跡」がその一つに数えられます。  今回、紹介するのは、この旧島原藩薬園跡を活動拠点として、薬草を活用した町おこしの取り組みを行っている「島原薬草会」の皆さんです。  同会は、平成3年から「島原薬草趣味の会」としてスタートし、より実践的な町おこしに取り組もうと平成17年から「NPO法人島原薬草会」になりました。  会では季節ごとに集まり薬草の勉強会やイベントでの薬草料理のふるまいなどの活動を行っています。また、薬草を使った商品開発にも取り組んでいます。  会長の阿南達也さんに話を伺うと「島原には、『旧島原藩薬園跡』という素晴らしい歴史・文化が残っています。そして、身近には、健康に良い薬草がたくさん生えています。私たちは『食べる薬草』をテーマに健康づくりと町おこしの活動を行っています。この活動を通じて、ふるさと島原の発展につながればと思います。」と話してくれました。  会員の皆さんは、「健康に興味があったときに、会の活動を知り参加しました。毎日、タンポポやオオバコなど、自分たちで作った薬草を食べるようになって健康診断の数値が良くなっていました」と笑顔で話してくれました。  薬草に興味のある人は、11月7日・8日に市内で開催される「全国薬草シンポジウム2015in 島原」に参加してみてはいかがでしょうか。  また、会では会員を募集しています。詳しくは事務局の大場さん(電話63-4402)に問い合わせてください。  (写真)島原城での薬草粥のふるまいをしている様子