●つなごう!未来へ 島原半島世界ジオパーク72 島原半島ジオパーク協議会(65-5540) 冬の雲仙を彩る氷の花「霧氷」 毎月、島原半島のジオサイトやその見どころを紹介するこのコーナー。  今回は冬の雲仙を彩る氷の花「霧氷」を紹介します。  冬の時期を迎えた雲仙の山々は、時に白く光り輝きます。これは、山の木々の枝に霧氷が付着するためです。霧氷は、氷点下の中で樹木に付着して発達した氷の総称で、地元の人から「花ぼうろ」という呼び名で親しまれています。この霧氷は、ある気象条件がそろったときにきれいに成長するのですが、なぜ霧氷はで きるのでしょうか。また、どのようなときに、きれいな霧氷が観察できるのでしょうか。  通常、気温が0度を下回ると、空気中の水分が凍り始め、氷の粒ができます。 これが大きく成長し、重くなって地表に落下し始めたとき、融けることなく氷のままで地表に達した粒が雪です。ところが、ちりやほこりがほとんどない、きれいな空気の中では、空気中の水分は気温が0度を下回っても凍りません。0度以下の水分を含んだ空気が小枝などにぶつかると、中の水分が一気に氷になり、枝にくっつきます。これが繰り返されると、小枝から風上側に向かって、氷が薄い板のように伸びていきます。これが霧氷です。  霧氷は、見え方の特徴によって大きく3つの種類(樹じゅひょう氷・粗そひょう氷・雨うひょう氷)に分けられます。  樹氷は、白くてもろい霧氷のことで、風速が毎秒5メートル以下の、風の弱い日にできます。  粗氷は、氷の板が成長する方向に気泡が一列に並んだ硬めの霧氷のことで、気温がマイナス4度以下で、風速が毎秒5〜20メートルのやや強い風の中で出来ます。  雨氷は、比較的気温が高い条件下で水分が木の枝に付着してできた透明な霧氷のことで、気温がマイナス4度以上で、風速が秒速30〜40メートルのときにできます。  雲仙岳の山頂付近では、粗氷に分類される霧氷が成長することが多いようです。 それにしても、温暖な九州であるにもかかわらず、雲仙の山々ではなぜきれいな霧氷が見られるのでしょうか。  冬になると、北や北西から季節風が吹きつけます。この季節風は、東シナ海を通過してくる際に、多くの水分を含むようになります。この水分を含んだ季節風が、長崎県内で最も高い、標高1500メートル近い雲仙岳にぶつかると、風の中に含まれている水分が木の枝にぶつかり、きれいな霧氷をつくりだすのです。 海に囲まれた場所に、度重なる火山噴火によって大きく成長した雲仙岳があることが、霧氷ができるのに適した自然環境をつくりだしたと言えるでしょう。 1月から2月にかけて、雲仙の山々では、条件が整えば霧氷が楽しめます。この時期にしか味わえない幻想的な風景を眺めに、雲仙の山に出かけてみてはいかがでしょうか。  次回は「天如塔と霊丘公園」を紹介します。 (写真)冬の雲仙を彩る「霧氷」 (写真)木の枝に成長した「霧氷」※風が左から右に吹き付けたことを表しています