◎輝く島原人 THE SCENE Vol.16 島原に生きる 広報しまばらでは、生き生きと活動し、楽しみながら社会に貢献する人生の達人たちを「輝く島原人」として紹介しています。 第16回目は乳幼児の保育と健全育成に尽力され、地域における社会福祉の向上に貢献された市内現役最高齢保育園長の柳堂 愼徹(やなぎどう しんてつ)さん(83)を紹介します。 (写真1)園外の外遊びで、園児と一緒になって遊びを楽しみ、コミュニケーションを取る柳堂さん 「人生の達人」柳堂 愼徹さん(83)  昭和10年、4人兄弟の長男として有明町湯江で生まれ、育つ。  中学卒業後、教員と僧侶を目指すため佐賀の高校、短大へ進学。昭和34年から小・中学校の教員を34年間勤めた。  教員退職後、向陵福祉会の理事長兼保育園長に就任。主任児童委員や心の電話相談員を務めるなど社会福祉の向上にも尽力。  現在、市内現役最高齢保育園長。  島原市表彰・長崎県民表彰(社会福祉功労、平成27年)、厚生労働大臣表彰(平成29年)。有明町湯江在住。 ▼子どもの成長が自分の宝  34年間小・中学校の教員として働き、その後は保育園でたくさんの子どもたちの成長を見届けてきた柳堂さん。  保育園では特に入園してくる子どもたちの多くが、最初はなかなか懐いてくれず、寂しい思いをすることも多かったそうです。  そんな時、柳堂さんは子どもの目線になって、自分から声を掛けに行き、子どもたちの世界に入ることで距離を縮める努力をしています。そして、運動会や発表会など、練習でできなかったことが本番でできるようになったとき、一生懸命頑張った子どもを抱きしめて「良かったね」と頭をなでてあげることを心がけているそうです。  「教員時代の教え子や卒園児が成人式の後に会いに来てくれたり、その子どもが保育園に入園した時など、子どもの成長を感じるとともに、自分自身も喜びを感じます」と笑顔で話してくました。 ▼子育て親への支援の大切さ  平成のはじめ、保育園長に就任し、旧有明町の主任児童委員も務めることとなった頃、主任児童委員として地域の子育て親子を訪問した際に親からは、「口ばかりで何もできないなら来るな」と罵声を浴びせられたり、当時水道が整備されてない地域で活動を行っていると、生活が苦しくミルクを作る水ですら確保できずに近くの水道のあるお墓などから水をもらい冷たいまま子どもにミルクを与えていた状況を目のあたりにし、子育て親子の健やかな育成にどうすればよいのか日々悩んでいたそうです。  そこで柳堂さんは町長に相談し、水道の整備を進めることと、当時男性が多かった主任児童委員に対し、子育てと母親の気持ちが分かる女性の主任児童委員と協力して対応にあたる環境づくりを提案し、こうした問題の解決に果敢に取り組んだそうです。  「子育てに関して、金銭的な問題や生活環境整備など、気持ちだけでは解決できない問題もあるため、行政と一緒になって支援していくことが大切なのです」と自身の経験から話してくれました。 (写真2)浄教寺住職として、檀家さんへの笑顔と気配りも忘れない柳堂さん 「笑顔と思いやり」和顔愛語(わがんあいご)の大切さ ▼保育・教育を通して伝えたいもの  島原半島では昔、お寺が保育所の機能を果たしており、ほとんどの子どもがお寺に集まり、その流れで現代の保育園になったことを柳堂さんは教えてくれました。  大人も子どもも忙しいのが現代社会です。子どもは嬉しいと感じたときに人に話したがります。その時、5分でも10分でも良いから子どもの話を聞いてあげることが大切だそうです。  仮に大人が忙しいときでも、その理由を説明し、子どもを納得させてから自分のことをする。どんな時でも怒ってしまうと、子どもが壁を作ってしまいます。つまり、「大人と子どもが互いに良く話し合うことが必要で、大人がわがままな生き方をしていることに気付くことが大切です」と話してくれました。 「和顔愛語(わがんあいご)」柳堂さんがいつも自分に言い聞かせている言葉です。その言葉どおり、「いつでも和やかに、穏やかな笑顔で思いやりを持って接することが、素直に頑張る、何事にも諦めない子どもを育てることにつながると信じて日々頑張っています」と、満面の笑みで語ってくれました (写真3)誕生会で園児に向かい祝いの挨拶をする柳堂さん