◎つなごう!未来へ 島原半島ユネスコ世界ジオパーク  島原半島ジオパーク協議会(65-5540) ○噴火がもたらした群落 霧氷沢(むひょうざわ)のヒカゲツツジ  普賢岳の山頂から東に向かって登山道を進むと、ほぼ垂直に切り立った崖に囲まれた谷があり、その向こうに平成新山が迫ります。この谷は風の通り道になるため、冬に霧氷がよく見られることから、霧氷沢と呼ばれています。過去の火山噴火とその後の大地の動きがつくった垂直の溶岩の崖にへばりつき、岩場を覆うように生えているのが、ヒカゲツツジです。  ヒカゲツツジはミヤマキリシマと同じ背の低いヤマツツジの一種で、その名の通り、日陰でもきれいな花を咲かせます。また、ツツジのなかでは珍しい、淡い黄色の花をつけます。華やかなミヤマキリシマとは対照的な、落ち着いた魅力を持つヒカゲツツジは、特に霧氷沢の周辺で素晴らしい群落をつくっています。それはなぜなのでしょうか。  ヒカゲツツジは、周りを背の高い樹に囲まれた日当たりのよくない場所や、水の少ない岩場といった、他の植物が生えにくい場所を選んで命を紡いできました。ところが霧氷沢は、平成噴火の際に火山ガスや火山灰の影響を直接受け、多くの植物が枯れてしまいました。この噴火を生き延びたヒカゲツツジは、上を背の高い樹に覆われなくなったため、一気にその勢力を伸ばし、岩場を覆いつくす群落となったのです。  噴火がつくり出した岩場の上でたくましく生きるヒカゲツツジは、周りに背の高い樹が生えてくるまで、毎年4月末から5月初めに、霧氷沢の岩場を淡い黄色に染め続けます。   (写真) 霧氷沢の崖を覆うヒカゲツツジの群落