ふるさと再発見 『石垣御修復控』 島原城石垣修復の記録   昨年6月、九州・山口地方を襲った大雨により、島原城の石垣が崩れました。現在、懸命の復旧工事が進んでいますが、単に石垣を積み直すだけではなく、江戸期の石積みの技術や旧状を解明するための発掘調査を行うなど、価値ある「文化財」として石垣を未来に継承するための工事が、まさに今行われているのです。  江戸時代にも、石垣が度々崩落し、それに伴う復旧工事が行われてきたことは、遺された数々の資料からも確認することができます。中でも今回紹介する資料は、1848年(弘化5・嘉永元)の工事の経過 が日記体で事細かに記され、修復の工程や動員のことなどを解明する重要な手がかりとなり得る資料です。  この工事には、普請方や賄まかない方といった藩士、棟梁以下さまざまな階層の石工、賃雇の作業員から、さらには島原半島中の村ごとに交代で、多い村で百人規模の農民が手伝方として参加しました。遠方の村から来た者を受け入れるための仮設住宅も、今の市役所あたりに設けられています。  工費や人件費が決して潤沢ではない中で、重要になったのが酒。毎日のように振る舞われた酒が、作業に従事する多くの人たちの労をねぎらいました。また、その様子を見て、酒を献上する者も現れました。  現在、修復工事に直接携わることができる人は限られますが、まずは石垣に目を向けてみてください。数百年の時を経て今、目にすることができる石垣の姿の裏には、多くの人たちが携わりながら修復を重ねた「石垣の歴史」が、確かにあるのです。 (松平文庫学芸員 吉田 信也) クローズアップ 島原子ども狂言ワークショップ (写真)集合写真 能とともに島原に古くから伝わる伝統芸能「狂言」。その伝統芸能に触れ、島原の文化を体験しながら再認識し、伝承していくことを目的とした「島原子ども狂言ワークショップ」が平成16年から開講されています。現在の参加者は36人。園児から高校生までと年齢層は幅広く、参加者の中には9年目になる人もいます。  今年は開講10周年という大きな節目を迎え、島原の秋の風物詩である「島原城薪能」での10周年記念舞台の発表に向け、和泉流狂言方の野村万禄さんの指導のもと、5月から月2回、小謡(こうたい)や舞台での所作の稽古を積んでいるそうです。  ボランティアスタッフの一人の北田貴子(きただたかこ)さんは「狂言はわかりやすい古典芸能で、子どもたちや能楽に触れたことがない人にも親しまれ広がってきています。子どもたちが、この取り組みを通して、城下町・島原の歴史と文化を再認識し、次世代へ継承していくことを期待しています」と話してくれました。  8年目で第一中学校2年生の鶴田賢一郎(つるたけんいちろう)くんは「セリフの稽古はきついですが、お客さんが楽しんでくれるので、やりがいがあります。もっと上達して役に入り込めるようになるのが目標で、今後も続けていきたい」と元気よく話してくれました。  狂言は、ユーモラスなセリフと身のこなし、簡素化された舞台で、想像力を膨らませながら見る醍醐味があります。島原の歴史に触れる良い機会です。皆さんも10月19日に島原城天守閣前広場で開催される「島原城薪能」をぜひご覧ください。 (写真)稽古の様子