つなごう!未来へ 島原半島世界ジオパーク64 島原半島ジオパーク協議会(65-5540) ●〜九州の火山地域を選ぶ花〜ミヤマキリシマ  毎月、島原半島内のジオサイトやその見どころを紹介するこのコーナー。今回は「長崎県の花」および「雲仙市の花」に選定されているミヤマキリシマです。  ゴールデンウィークを過ぎると、雲仙の山々は少しずつピンク色に染まりはじめます。ミヤマキリシマが開花を迎えるためです。  ミヤマキリシマは高さ1メートルほどの低木類で、他のヤマツツジ類よりも花が小さく、枝が密集していることや、樹幹によっ て咲く花の色が微妙に変わる、という特徴があります。  しかし、ミヤマキリシマの最大の特徴は、霧島、阿蘇、九重、由布・鶴見、そして雲仙といった九州の火山地域にのみ自生するという点です。  九州各地で天然記念物に指定されているこの美しい花の群落は、なぜ九州の火山地域にしか自生していないのでしょうか。  ミヤマキリシマは樹高が低いため、上を背の高い高木類に覆われてしまうと、日光がさえぎられて光合成ができなくなり、群落の維持が困難となります。  そこでミヤマキリシマは、他の高木類が生えることができないような過酷な環境をあえて選び、そこに群落をつくるという生き残り戦略を採ります。  ここでいう過酷な環境とは、冬は雪が積もるような寒冷な場所、常に強い風が吹き付ける場所、土壌が少なく、地表付近の土砂が移動するような荒れ地、そし て時々有毒な火山ガスが流れてくるような場所です。  湿潤・温暖で、植物が繁茂しやすい環境にある九州地方において、多くの植物にとって過酷な環境を造りだしたのは、噴火や地熱活動に代表される火山の活動 です。  美しいミヤマキリシマの群落を維持するためには、他の植物の生育を拒むような過酷な環境や、火山の噴火が必要なのです。これが、ミヤマキリシマが九州の 火山地域にのみ群落をつくる理由です。  仁田峠や池の原、宝ほうばる原に行くと、ミヤマキリシマがとても日当たりの良い場所に群落をつくっているのが分かります。  また、雲仙地獄で見られるミヤマキリシマは、火山ガスや温泉が噴き出す地熱地帯と、アカマツなどの高木類が生えている場所の間にある、わずか数メートル 幅の場所を選んで生えており、大変興味深いです。  今年は、ミヤマキリシマの花の美しさに加えて、ミヤマキリシマがどんな場所に生えているのかも観察してみてください。  あえて逆境にチャレンジし、そこで美しい花を咲かせ続けるなんて、素晴らしいですね。  次回は「小M鉄道跡 緑のトンネル」を紹介します。 (写真)仁田峠のミヤマキリシマ群落 (写真)雲仙地獄のミヤマキリシマ ●島原半島ジオ・マルシェ 島原半島のこだわりの特産品を一堂に販売します 甲冑を着て記念撮影などのイベントもあります ▼と き 5月3日(日)、4日(月)10時〜16時 ▼ところ 雲仙岳災害記念館 ▼問い合わせ先 島原半島観光連盟(62-0655)