『代官当用(だいかんとうよう)』 知識と経験の生かし方
松平文庫に伝わる資料の中には、島原藩の「代官」が業務をする上で必要としていた書類も数多くあります。今回紹介する資料もその一つです。
時代劇でも、どちらかといえば悪役でよく登場してなじみのある代官ですが、藩内の村々を担当し、年貢の徴収や村内の訴訟を扱うなど、むしろ村のさまざまな問題事を解決するのが代官の主な役割でした。特に島原は、豊前・豊後(今の豊後高田市など)にも藩領があったので、いわば「転勤」や「単身赴任」をするような代官もいました。
代官は村内の様子や過去の出来事をつぶさに記録しました。
村の祭礼や年貢の徴収、巡見や参勤といった幕府や藩の役人の村内通行など、村における多種多様な事例に、これらの記録を参考にしながら対処していったのです。
今風にいえば「業務マニュアル」のようなものでしょうか。しかし、お上からマニュアルが与えられるのではなく、受け持った代官が独自に村の歴史や地理について記録し、解釈しながら業務の中で生かしていったという姿勢に、今の私たちが見習うべき点があるのかもしれません。
普賢山や妙見山で殺生を禁じる石碑が築かれたこと、杉谷村の池普請(いけぶしん)、九十九島に観音様を祀る祠を一村一祠、計三十三祠建立する願が出されたこと…。
ほんの一部ですが、これらの「地域の歴史」が見出されます。島原という地域のことを知る上で、今なお生かされるべき資料です。
(松平文庫学芸員 吉田 信也)
(『広報しまばら』平成25年12月号「ふるさと再発見」)
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【写真】代官当用 |