「華夷変態(かいへんたい)」と「唐人風説書(とうじんふうせつがき)」
今回紹介する『華夷変態』と『唐人風説書』は、表題は異なりますが、内容的には一連の資料だと思われます。
いわゆる鎖国期に唐船がもたらした海外情報の報告書(唐船風説書)を収めたものです。延宝2年から享保13年まで(1674~1728年)、合わせておよそ2200通の風説書が収められています。
序文によると、華(明朝)から夷(清朝)に移り変わった状況を著すもの、という意味で『華夷変態』と名付けられました。
現在、この資料がまとまって残っているのは、筆写した大学頭(幕府の学問所の統括者)・林家より伝来した国立公文書館・内閣文庫と島原にある松平文庫だけです。また、風説書の原文書は現存しておらず、この時代の外交について知る上でも大変貴重な資料です。
冒頭には中国における明朝から清朝への政権交代に関する記事が載せられ、本国の資料にも現存しないような民間の風聞なども含まれます。
政治的なことだけではありません。例えば、積み荷の品目や、南方で洪水のため、黒砂糖の生産量が少なかったこと、途中天候が悪く、急きょ対馬に寄港し、水や野菜をもらったことなど、交易の様子が目に浮かぶような記事も多く収められています。
島原藩は長崎の巡視や番船の派遣など、西国の譜代大名として特別な役割を幕府より命ぜられていました。いずれも長崎における島原藩の位置づけを象徴する資料といえます。
(松平文庫学芸員 吉田 信也(よしだ しんや))
(『広報しまばら』平成26年3月号「ふるさと再発見」)
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【写真】「華夷変態(かいへんたい)」・「唐人風説書(とうじんふうせつがき)」 |