「松平忠房(まつだいら ただふさ)ゆかりの古写本 松平文庫の源流」
学校の教室の片隅の本棚に並べてある、自由に借りて読んだりできる本の集まりを「学級文庫」と称しますが、「松平文庫」もまた、島原にゆかりのあるさまざまな文献が集まった、いわば「本棚」といえます。
そのさまざまな文献の中の一群に、松平氏として初めて島原の藩主となった松平忠房ゆかりの古写本群があります。
忠房の家系(元とする地名をとって「深溝(ふこうず)松平家」と称します)は、代々古典文学や連歌(れんが)などの文芸に精通した家系でした。さらに丹波国(たんばのくに)福知山という、京の都に程近い地域を治めていたこともあって、質の高い古写本が多く忠房の下(もと)に集まりました。
忠房の蔵書家ぶりは、福知山藩主時代から当時の学者の日記にも記されるほどでした。
1669年(寛文9)6月、忠房は、福知山から島原へ移るよう幕府より命ぜられます。その際、一部の蔵書の「引越」の方法について忠房が指示したことが、当時の日記に記録されています。
今なお、松平文庫の古写本は、全国の国文学者や歴史学者などの注目を集め、研究のために利用されており、平成25年3月29日には、「肥前島原松平文庫」として県の有形文化財に指定されました。
松平文庫は、その一点一点の本の価値だけではなく、「お殿様の本棚」を300年以上経った今でも垣間見ることができる、全国的にも珍しく貴重な「資料群」であることを、未来にも伝えていかなければなりません。
(松平文庫学芸員 吉田信也(よしだ しんや))
(『広報しまばら』平成25年5月号「ふるさと再発見」)
|
【写真】昭和36年当時の「松平文庫」 現在は島原図書館内にあります。 |