被害を拡大させた土石流
谷や川底に積もった石や土砂が長雨や集中豪雨によって一気に下流に押し流される現象が土石流です。数十トンもある大岩を石ころのように押し流す破壊力をもつ土石流は、日本各地でも様々な被害をもたらしています。しかし島原では火砕流によって火山岩や火山灰が厚く堆積した山の斜面や川を中心にして何回も土石流が発生しました。もともと集中豪雨や台風の被害は少なくない地域ですが、火砕流の後遺症によって比較的降雨量の少ない場合でも被害が広がりました。
土石流の被害記録
火砕流が到達しなかった地域にも土石流は及び、民家や橋、道路、鉄道を押し流し、市街地や耕地を土砂で埋め尽くしました。
6.3大火砕流の爪痕も生々しい平成3年6月30日に発生した土石流は、国道57号を寸断、国道251号を越えて海岸線まで達しました(家屋の全半壊148棟)。
平成4年8月8日には台風10号の影響で土石流が発生。30ヘクタールの地域で氾濫が起こり、島原鉄道、国道251号が土砂に埋没しました(全半壊355棟)。
翌平成5年4月28日~5月2日には水無川、中尾川で土石流発生。水無川河口より2キロメートルの地点で70ヘクタールにわたり扇状に氾濫して、国道、島原鉄道が広い範囲で土砂に埋没しました(全半壊338棟)。
さらに6月13日から7月17日にかけて、水無川、中尾川で大規模な土石流被害が頻発しました。
市内には国道57号、251号の2本の国道が通っていますが、中でも251号は市内を南北に横切る幹線道路です。
その南端を流れる水無川は、上流から国道を縦断し、有明海にいたる広い範囲で、橋梁の流失や道路の埋没が起こり、諌早方面へ抜ける北側の中尾側沿いでも道路の水没に見舞われ、島原市は幾度となく孤立状態におちいりました。
またこの時期は火砕流も頻発し、降雨に多量の降灰が混じり泥雨化するなど市民はダブルパンチを受けて絶望的な気分が広がりました。