一野遺跡では、平成3年の発掘調査で縄文時代早期の通称「一野式」と呼ばれる円筒形条痕文土器が多数発見されています。
一野遺跡発掘調査
この土器の特長は、直線的な円筒形の器形で、口縁部から胴部中央にかけてアカガイ等の貝殻で縦と横に直線的な条痕を連続して施すことで、最初に縦方向の条痕を施し、次に横方向の条痕を施します。胴部中央から底部までは無文ですが、土器表面は丁寧に整えられています。完全な形の土器が発見されていませんが、底部と考えられる土器片は平底と丸底がいずれも発見されているため、両方のタイプがあったと考えられます。
一野式土器 一野式土器実測図
一野式土器に伴うはっきりとした遺構が発見されていないため、当時の縄文人がどのような生活をしていたか不明ですが、一野式土器と共通の特長を持つ土器が熊本県や鹿児島県でも発見されていることから、この時代すでに有明海を隔てて遠く離れた地域との交流をしていたことは間違いありません。
一野遺跡位置図